白浪物の成立とその展開

ということで、前回の解答。
答えは全部。『青砥稿花彩絵画』『十六夜清心』『河内山と直侍』となります。


そもそも、『白浪物』って何よ?という話ですが。
簡単に言うと、盗賊が主人公となっている歌舞伎作品ということです。


もう少しくわしく。
正確に言うと、河竹黙阿弥(河竹新七二世)が作った作品を特に指します。
幕末、ペリーの来航などで政治や世の中が混沌としたご時世。浪人が溢れかえり、治安も悪くなる一方でした。
そんな世情を反映してか、講釈師・松林伯円がつとめる盗賊を主人公にした講談が人気を集めるようになりました。これに目をつけた河竹黙阿弥が、市川小團次四世のためにこの講談を次々に脚色して歌舞伎化していったのが白浪物の始まりだそうです。


歌舞伎作品について。
歌舞伎作品は一般的に、一つの作品につき、2つないし3つの名称が存在します。
これを、それぞれ「外本題」「別本題」「通称」で分けられています。
例えば、QMAではすっかりお馴染み(?)の三人吉三廓初買』なら

外本題:『三人吉三廓初買』(さんにん きちさ くるわの はつがい)
別本題:『三人吉三巴白浪』(さんにん きちさ ともえの しらなみ)
通称:『三人吉三』(さんにん きちさ)

となります。
QMAにおいては、「外本題」と「通称」で出てくることが大半なので、この2通りを覚えていればだいたい大丈夫だと思います。
作品の概要とタイトルの読み、およびタイトルは並べ替え・順番当てで出来るようにしておきましょう。

青砥稿花彩絵画

こちらもQMAでは結構出題率が高い作品。

本:『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうし はなの にしきえ)
別:『弁天娘女男白浪』(べんてん むすめ めおの しらなみ)   
通:『白浪五人男』(しらなみ ごにん おとこ)

日本左衛門(日本駄右衛門)と弁天小僧菊之助で有名な作品。
石川五右衛門、鼠小僧と並ぶ日本屈指の盗賊「白浪五人男」の活躍を描いた話です。
「知らざあ言って聞かせやしょう。・・・」の名台詞はあまりにも有名です。

十六夜清心

本:『小袖曽我薊色縫』(こそで そが あざみの いろぬい)   
別:『花街模様薊色縫』(さともよう あざみの いろぬい)   
通:『十六夜清心』(いざよい せいしん)

こちらは少しマイナーな作品。
安政二年 (1856) の江戸城御金蔵破り事件を織り交ぜた、八重垣紋三の逸話と初春恒例の曾我兄弟の対面を付け加えた話なのですが・・・
現在は主人公・清吉と情婦・十六夜との会話や恋物語の部分が大きく取られています。
そのため、外本題より通称の方が有名となっている作品。

河内山と直侍

本:『雲上野三衣策前』(くもの うえの さんえの さくまえ)   
別:『天衣粉上野初花』(くもにまごう うえのの はつはな)
通:『河内山と直侍』(こうちやまと なおざむらい)

QMAでは別本題の並べ替えで出てくる作品です。
河内山宗俊というお数寄屋坊主*1が、大名に行儀奉公にでている上州屋という質屋の娘が殿様に見初められて難儀をしているのを知り、上州屋からちゃっかり金をせしめたうえで、大名屋敷にのりこみ娘を取り戻すという話。
悪人をいいようにボコボコにするという話で、庶民には大うけだったそうです。

*1:江戸城でお茶の接待などをする職業の一つ。ちゃっかり文系学問・文字パネルのグロ問だったり。